「つながれる幸せ」 2004/3/21

「白もくれんが咲くと春が来る」と言う祖母の口癖が、春の到来を予想する私の一番の目安になっている。

今年は2月の下旬から近所のもくれんが咲き始め、暖かさに騙された「もくれん」が、早く咲きすぎた事を後悔するのではと案じていたが、もくれんの春を知る力は正しかった。

早い春の訪れと共に、チョット気になる犬がいた。

器量の悪い中年過ぎの野良犬で、近所の家の玄関先を自分の宿と決めてから半年がたっていた。

町内の当番でその家に行くと、その野良が起き上がり、玄関を鼻先で開けて遠慮がちな声でご主人を呼ぶと、家の中から、テリア犬が主(あるじ)と一緒に嬉しそうに出てきた。

野良は大きく開かれた玄関をのぞきながら、中に入ろうとしない。

行儀のよさに感心すると『居ついてしまったので餌だけはやっている』とのこと。

そこの主(あるじ)と愛犬テリアが夕方、散歩にでかける。

鎖につながれて散歩するテリアは、小さな体で、あごを上げて胸を張り、その歩き振りは自信と誇りがみなぎっている。

野良が来るまでは、このテリアは散歩時にも自慢そうな態度をしていなかった。

それどころか、すぐに止まって匂いをかぎ続け、名犬らしさもプライドの存在も感じさせないテリアだった。

つながれていない野良はいつでも散歩が出来るのに、一匹で歩くのは好まないらしく、いつも愛犬テリアの散歩時に、3メートル後ろから遠慮気味にゆっくりとついて行く。

鎖や首輪は邪魔な物だと思っていた私だったが、鎖が、愛犬としての名誉の証に見えてきた。

人が組織に所属したり、結婚する事で安定するように、

犬も、完全な自由よりもある程度の束縛を好むという事なのかもしれない。

普段はごろりとしている野良だが、騒々しいバイクが通るとけたたましく吠える。

頭が良くて立場をわきまえた態度がいじらしくて、犬の今後の運勢を知りたくなった。

頭が良く思慮深いという卦と共に、未来も明るい運勢が出た。

頭が良いために、運勢も安定した生き方ができると言うのが占いの答えだった。

そこの家の主(あるじ)が育てるつもりが無いのならばと、貰うつもりで行ってみると、

時遅く、野良は新しい鎖にしっかりとつながれていた。

暖かな日差しの中、野良はもう、うつむいていなかった。

犬と人の情を比べてみた・・・

その後も、愛犬テリアと元野良が散歩に行く姿が見られるが、テリアよりも10倍も大きな元野良はテリアの後ろをついて、態度はいつでもテリアを立てている。

犬でありながら、このように節度溢れる態度をとるとは、持って生まれた気質がそうさせるのだろうか・・・・・。

人間は、犬よりも感謝する事が苦手なのかもしれないと思うことがある。

占いの馴染みのお客様で、妻子持ちの男性から200万円のお金をプレゼントしてもらった人がいる。

お客様は、かなりの目立つ美人で水商売をしている。

『親が病気で手術費が居ると嘘をいって、お金を貰ったのですが、このお金をもらったまま逃げても追いかけてこないか、それを占って下さい』と言われた。

占うと、この男性はお金が無い人でありながら、人から借金をして200万円を工面してきたと卦に出ていた。

男性には幼い子供がいて、本人の性格は単純で悪意の無い人だから、逃げても恨む事は無いが、本気でこの女性が好きで、離婚して結婚する事を望んでいると占いの答えには出ていた。

私は、浮気をする人、家庭を壊す人が沢山いる事も充分に知っているつもりだったが、この男性を父として頼っている家族の様子が占いの答えに見えた時、何とも言えない切ない気持ちになった。

お客様に「この男性はお金を借金して集めてきたのですよ。奥さんや子供達の生活は質素で我慢をさせています・・。

お金を貰ったまま逃げても、あなたを追いかけて来ませんが、がっかりしますね。この人のあなたへの惚れ方は凄いものがありますから、あなたがお金が必要だと言えばもっと工面してくれますよ。とっても頭の悪い男性で、あなたはこの人が嫌ですよね』と答えました。

『そうなんです。気持ち悪くて大嫌いなんですが、私がお金を貰ってあげる事がこの男性の幸せなんです。幼稚園に行く子供が居ると言っていましたし、確かにお金持ちではないのは判ります。でも他のホステスにも100万上げた人なんですよ』

「こんな男性が居るんだ・・・・」、と感心しながら、騙されている男性よりもその人と関わる家族を気の毒に思えた。

皆さんは、このお客様を特殊な女性だと思うかもしれないが、

多くの自信を持った女性達は、男性の女性に対しての犠牲的な行為は女性から見れば普通の事であり、可愛い自分と関わり尽くすこと出来たあの人は幸せだと、語る。

プレゼントを貰えば、これも自分に好かれたい為にくれたと思うから、貰って上げるという気持ちになりやすい。

食事に関しては、たいしたお店に連れて行ってくれないと批判をし、高級な店に連れて行かれれば自分はそれだけの価値ある女だと自負心が強まる。

もちろん女性だけとも限らない、男性でも自信を持った人は、他人の親切な行為は自分に気に入られたいからだと断言するのをよく耳にする。

相手が自分を気に入っている為の親切なのだから、それは相手の得であって、親切にされた側は感謝する必要はないということなのだ。

こんな事はわざわざ書くまでも無い事で、人の気持ちは、こんな物なのかもしれない。

私は長い事、人の気持ちに対して過大な理想を求めていたのだろう、やっぱり私は

夢をみすぎた現実を知らない人間なのだろう。

『僕を好きだからご馳走したり物をくれて機嫌をとるんですよ』と、こんな不遜な台詞も自信を持った男性から聞くし、仲の悪い嫁姑関係でも、立場の強い側が似たような台詞を言う。

他人の悲しみに敏感な人や、慎み深い人は、人情が熱い傾向があり、彼らの特徴は、些細な親切にも敏感に反応する。

占いをしていると、本音を聞かせていただけるので、人の考え方や受け止め方を教えていただけるので、勉強になって有難い。

犬の方が、相手の好意を純粋に喜んでくれると想ったが、きっと、犬も同じ犬同士から肉をプレゼントされたら、増徴するだけかもしれない・・・・

心をつねるようなお話で、虚しさを感じさせてしまったら「ごめんなさい」
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人生の喜びとけだるさの比率を比べると、たとえ、その配分が5対5であっても

けだるさに関して、我々は敏感にきつく感じますね・・・・。

春の時期は、鬱になる人も増えるようです、春の無常、春の嵐、桜の咲く時期は

桜の見事さと、花の時期の短さ、風や雨が容赦なく桜を散らせるたびに、

桜と人生が、哀歓を持ってダブります。

東京に桜の開花宣言があった二日後の昨日、東京にも埼玉にも雪が降りました。

つぼみが膨らんできた桜を見上げました。

桜は自分自身を労わろうとしないクールなお天気に対しても、泰然自若の落ち着きをもって堂々としていました。

今年の桜も、また潔く散るのでしょう。